コラム
2019.04.19
ヘンプは長い間、誤解されてきた植物です。それはやはり「ヘンプ」が「大麻草」の仲間であるからでしょう。お互いにカンナビス・サティヴァという種類の植物であり、全く同じ生化学的構造を持っています。
これら二つの違いは、含有されている向精神性カンナビノイドが、ヘンプのほうがはるかに濃度が低い点にあります。食用、またそこに含まれるCBDやその他カンナビノイド類、繊維、バイオ燃料といった、多くの用途を目的としてヘンプはヨーロッパ各国で栽培されています。
こうした多くの用途や、人々の健康のために使われてきたヘンプですが、誤った情報で悪者と見なされ、違法となってしまう前までは、日本を含めた世界の農業史においてはなくてはならない存在でした。
第二次世界対戦後にヘンプの栽培を禁止したのはアメリカ合衆国です。アメリカが世界の国々に麻薬規制を行い、ヨーロッパ各国も規制に従ったことでヘンプ産業が衰退していくという現象に陥りました。
一方で麻やカンナビノイドに関する研究成果が蓄積されたことにより、産業用ヘンプは大麻草やマリファナと切り離して考えらえるようになったのも事実です。
1996年にドイツで産業用大麻に関する国際基準が設けられ、麻薬規制をリードしてきたアメリカでさえも2014年に産業用ヘンプ農業法が制定されました。国際的な障害がクリアになったことにより、ヘンプ栽培に拍車がかかりました。
ヨーロッパ産業用ヘンプ協会(EIHA)の国際会議で報告された動向によれば、1993年から2016年までのEU諸国の栽培面積は、2011年に栽培面積が減少するも2011年以降右肩上がりに栽培面積が急速に増加していると発表されています。
今後時間をかけてヘンプ教育を普及させることで、もう一度ヨーロッパをはじめ日本でも最も価値のある農業資産となることでしょう。ヘンプの歴史を概観し、この植物がもたらしてきた豊かな遺産を発見していければ人々の健康に役立つのではないでしょうか。